トム・クルーズになった気分で、ミッション・ステートメントを書いてみる

90年代の好きな映画のひとつに「ザ・エージェント」(キャメロン・クロウ監督)という映画がある。クールなスパイ役で知られるトム・クルーズが、ちょっと格好悪い等身大の男を演じた映画だ。彼が演じるのは、有名エージェンシーに勤務するスポーツ代理人のジェリー・マグワイア。多くのクライアントを抱え、素敵な恋人もいる。つまり人生の成功者だ。

でも、ある日、アスリートたちを金儲けの道具に使っていることに疑念を覚えたジェリーは、熱に浮かされた若者が長文のラブレターをしたためるようにーーLINE全盛のいまでも、手書きはきっと受けるんじゃないかなーー、ミッション・ステーメント(提言書)を書く。タイトルは、「みんなが考えているのに、言葉にしていないこと。業界の未来」(THE THINGS WE THINK AND DO NOT SAY: THE FUTURE OF OUR BUSINESS)。クライアントの数を減らそう。一人一人に心を配ろう、と理想を語ったものだ。もともとは1ページのメモ程度のつもりが、25ページもの長文になってしまう。興奮状態にある彼は、出張先で同僚たちにその提言書を配る。

ちなみに、映画ではちらっとしか紹介されないが、キャメロン・クロウ監督はなんと全文を自分で書いていて、ここで公開している。

ジェリーのミッション・ステートメント

さて、資本主義社会で業界トップを走る一流企業が、こんな主張を受け入れるはずもない。ジェリー・マグワイアはあっさりクビになり、50人以上もいたクライアントたちも、たった一人の二流選手をのぞいて、離れていく。結局、ジェリーが活躍できたのは、大手の看板があったからなのだ。この映画は、どん底に突き落とされた彼が、ささやかな幸せを手に入れるまでの過程をコミカルに、ときにシリアスに紡いでいく。同時にスポーツ映画としての側面もあって、最後には大きく盛りあげてくれる。

「ザ・エージェント」の魅力についてはいずれ詳しく書くとして、今回ぼくが言いたいのは、この物語がミッション・ステートメントをきっかけに転がりだす、という点だ。思っていることを見える形にしたことで、最終的には目的を実現することになる。

このアプローチは自分にも応用できるかもしれない。

実は、新型コロナの感染が深刻化したあたりから、ずっと心を痛めている。ぼくが住むカリフォルニアやロサンゼルスは数字のうえでは深刻だけど、自宅で過ごすぶんにはちょっと不便なだけだ。はじめのうちは不安に陥ったり、不自由さを嘆いたものだけれど、この新たな現実との付き合い方にも慣れてきた。

その一方、罪悪感が募っていった。この心境は、3・11のときと似ている。たいへんな目に遭っている人たちがいるのに、自分がのうのうと暮らしていることへの後ろめたさだ。とくに、ぼくは「カンパイ!世界が恋した日本酒」「カンパイ!日本酒に恋した女たち」というドキュメンタリー映画で、飲食店や生産者の方々に言葉で言い尽くせないほどお世話になった。現在休止中のプロジェクトでも、お世話になっている。そんな方々がたいへんな目に遭っているのに、何もすることができない。

また、いま日本の都市部で自宅待機をしている人たちが感じているであろう息苦しさを想像しても、つらい気分になる。こちらは法律で外出が禁じられているから諦めもつくし、人口密度が低いから運動で気分転換もできる。外出禁止令のおかげでスモッグだらけの空気もきれいになった。それに対し、人が密集した場所で自らを律しながら、いつまで続くか分からない日々を過ごしている人たちが抱えるストレスは相当なものだと思う。

いまの危機を乗り越えるために自分ができることは、外出を極力控えて、病院のお世話にならないようにすることだ。それは分かってる。でも、それだけじゃ足りないんだ。

じゃあ、お前に何ができるのか? 悲しいことに、何も出来ない。いろんな場所で噴出している問題に対処できる資金も知識もスキルもない。

でも、なにかやるべきだ。明確に心の声が聞こえたわけじゃないけれど、得体の知れない息苦しさを払拭するためには、それしかないような気がした。

そんなわけで、映画を紹介していくことにした。

なんだ、いつもとあまり変わらないじゃないかと思うかもしれない。たしかに。でも、いわゆる「おうち時間」が増えて、動画配信サービスがみんなの生活のなかで重要性を増しているのは事実だ。そんななかで、ちゃんと楽しめて、しかも、前向きな気持ちになれるものを真剣に探していく。

そして、それをYouTubeで配信していく。人前に出るのが苦手な自分にとって、これは地獄のような挑戦だ。テープ起こしで自分の声を聞くだけでも嫌だし、これまでテレビに出演させてもらったときはオンエアーを見ないようにしていた。でも、今回は自分で撮影して、自分で編修しなければいけない。ただでさえ少ない自尊心をごっそり削られることになる。

また、時間も相当割かれることになるだろう。はじめて作ったYouTube動画は編集だけで10時間もかかってしまった。

それに対するメリットは、たまたまぼくの動画を見た人が、過去の名作を見てくれる可能性があることくらいだ。

いまのぼくは、それだけで価値がある気がしている。

そんなわけで、YouTubeを立ち上げた

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